東京回遊魚

人前で話すのが苦手だったのにテレビキャスターとなり、現在は企業研修と人材育成が本業に。当ブログでは、これまでに経験を積み重ねてきたスピーチやプレゼンテーションなど、「人前で話す」ための独自メソッドを公開&大好きな江戸文化の情報もあり^^

後藤健二氏について:号外的記録です。

前回の投稿から1週間ほど日数が経過しました。

続きとして、
テレビ業界に入ってからのことを書こうとしていましたが、
その前に記しておきたいことがあり、
号外的投稿です。

ここ1週間、
イスラム国関連の報道を見ていて、
毎日頭の中で憤りとむなしさを感じていました。

おそらく、私はかつて報道の世界に身を置いていたこと、
そして、2012年の夏にシリアで凶弾に倒れたジャーナリストの山本美香さんが元同僚であったことも関係しているからだろうと思います。

センチメンタルな感情というよりも、
報道の世界を知っている者だからこそ、
さらっと一連のニュースとして流すことがどうしてもできません。


仕事をして、ご飯を食べて、お風呂に入って、笑ったりと、
平穏な日常を送っていても、ちょっとした空き時間や夜になると、
みぞおちのあたりがどうしようもなく苦しく、痛みや不安のようなものを感じています。


報道の仕方がどうのこうのなんてことではありません。
報道という現場で今の時点で仕事をしているのであれば、
言おうとするのかもしれませんが、
今の私が、例えSNSであっても批判的なことは酒の席の愚痴のようなもの。お酒は楽しく飲むものなのでそれはやめときたい。


例えるならば、
ハーバード大学へ通ってもいないのに、
ハーバード出身者ってさぁ、
頭ばっかよくても●●●だよね~とネガティブな評価を声高にいってしまうとか、

モデルの仕事をしたことがないのに、
モデルちゃんってさぁ、
キレイってだけでさ、
ちやほやされて努力もしなくて稼げるからいいよね~、とか

いずれもキーワードが目立つ業界のことを、
未経験者でも何かしら上から目線で語りたがるのは、
それはそれは限りなくカッコ悪い姿に映ります。

その業界や仕事の厳しさを知りもしないでの評価トークは酒の席だけにしとこうよっ、と思います。


特別に目立つような仕事ではなくても、
自分が一生懸命に仕事や勉強をしてきた(している)業界のことを、
知りもしない人に石を投げられるようなことを言われたら…
言ってるひとに対してがっかりしたり、カチンときます。

「チョット、そんなん語るんなら現場で働いてみろよっ」
と、批判をされた側の人は誰でも心の中で憤るものではないでしょうか。


ということで、
今回の一連の報道のやり方云々是々非々は、
個人的に感じることはあっても、
私はすでに報道業界から引退した者なので自分の心の中だけに留めています。

そのうえで、

みぞおちのあたりにある苦しさがなんなのかというと、
そのひとつは後藤健二さんというひとりの日本人ジャーナリストの存在です。

私は後藤氏とは一切面識がありませんので、
各報道を通して後藤氏を知りました。


確かに後藤氏はシリアへの単独渡航という行為自体が無謀であり、
結果として大きな悲劇を招くことにもなってしまいました。


後藤氏の目的は湯川氏を救うこと。

加えて、ジャーナリストとしてのビジネス上の意識もあったのかもしれません。

実際に後藤さんは、
SNSを利用して記録を残し、You Tubeを使って中継もしていました。

それらの行為は、
金銭収益有無に関わらず、
ジャーナリストとしての宣伝行為(=営業)に該当することでしょう。

湯川氏を救うということ自体を仕事とし、
ジャーナリストとしての大きな賭けという意識も強かったのかもしれません。

後藤さんはテレビ局や番組制作会社に所属していないジャーナリストであり、
ご自身の会社の経営者でもあります。

規模でいうと、
おそらく「おひとりさま社長」かと思われます。
(※「おひとりさま社長」:社長1人だけで社員雇用は無しという事業家に使われている俗語)

そうすると、当然のことではありますが、
売上は経営者である社長が生み出していきます。

営業、経営に関わる事務と経理作業、本来の本業、
後藤氏に限らず、おひとり様社長は全てやるのがあたりまえです。

雇用しないと誰もやってくれませんし、
やってもらうとしたら社員を雇用するか、
外注の専門家へ発注=それなりの費用がかかります。

なので、小規模のおひとり様社長の会社は、
経営者自らの営業と実務によって得た利益を、
必要経費とご自身の給料にしていきます。

ジャーナリストという職業は、
慈善事業ではなく、事実を取材し報道することが仕事です。

新聞や雑誌、テレビ、Web媒体などの
メディアへ掲載されることによって利益が生じます。
講演も収入源ではありますが、本業は取材と報道です。


もし、湯川氏と一緒に帰国することができたのならば、
その映像や諸々の記録が高価値となり、
後藤氏の会社が得る収益は倍増することでしょう。


その目算があったとしても、
必要以上に責められることではないと思います。

確かに相手側の地へ踏み込むにしては丸腰すぎますが、
ご自身の体一つという命を賭けてのことでした。


一般的に利益を生み出そうとする手段と比較すると、
危険すぎると理解に苦しむ人も多いと思います。


しかし、
ギリギリ法に問われくなくても、
ごくごく一般の法人や個人でも、
やってはいけない詐欺まがいの手法であったり、
非を問われると逃げ足だけが俊足のごとく…とか、


実際のところ、世の中には、
ひとのふんどし借りても返すどころか、さっと逃げるもんねっ~、
な手段を優先してしまう残念な輩が存在するのもこの世の無情かと…。


後藤氏を擁護するということではありませんが、
これまでの後藤氏はご自身の体一つで戦地へ赴き、
危険な環境の中で現状を取材、報道し、
数多くの慈善奉仕にも励まれていたというご活動に敬意を表したいと思います。


そして、
後藤氏の御霊が安らかに眠られることをお祈りいたします。