「化粧声」癖をお直し、『ズームイン朝!』後は癖のあるカ●ーを堪能
前回の投稿では、
札幌から東京へと拠点を移し、
フリーアナウンサーとして再出発した私は、
「化粧声」が気持ち悪いとNGを出されたくだりで〆ました。
そこで「化粧声」について。
辞書などで調べると、
歌舞伎の主役を引き立てるために、脇役が発する声のことあります。
しかし、私が指摘された「化粧声」は、
それではなく、歌舞伎にも関わることではなく、
本来の自分の声に化粧をしているような声という意味です。
つまり、
2月10日の投稿にあるように、
札幌で先輩キャスターAさんを真似た声を習得(?)した私の声は、
声量こそ問題ないものの、
地声とは違っていてとても不自然であったということです。
具体的な特徴でいいますと、
ふだんの会話で話している声よりも、
いざマイクをもって話す際の声は2トーンほど高くなっていました。
そしてやや演技がかったような癖がありました。
東京では先輩キャスターAさんの真似をする必要がないとココロが解放されていても、自分がイメージしていたプロの声、プロの音色と思う声を、自分の喉から発していました。
それが気持ちが悪いとされる「化粧声」になっていたのです。
仕事の際は、
そうしなければいけないと思い込んでいたのですが、
勘違い度200%でした。
また、「化粧声」のままだと、
喉のあたりに負荷をかけているので、
長時間声を使っていると腹筋で発声しても声が続かなくなってたり、
喉が詰まってくるような違和感があって声質が安定せず、
声枯れの原因にもなりやすいのです。
「本来の地声をしっかりと鍛えましょう。
あなた自身の声を育ててください」
指導してくれた東京のコーチにこう言われました。
このコーチは、ラジオ局からTV局のアナウンサーになり、その後ディレクターからプロデューサーにまでなった方で、全国のアナウンサーの特徴や番組の傾向を熟知している方でした。
そのコーチ曰く、
不自然な「化粧声」になっているケースとしては、
アナウンサーであれば地方局にその傾向が強いことと、
ある一定の職業(接客業)にも業界独特の音色の声があると話していました。
それはやはりその都市や企業の長年習慣化された文化が背景にあるとも。
だからこそ、各地の局で歓迎されるトーンの声、
企業が接客教育の上で統一化している独特の声が存在し、
それらは企業カラー、ブランドを形成する上での一要素になっていると思います。
例えば、
百貨店のエレベーターガールの方の声と話し方も独特ですが、
それはエレベーターという空間に適した発声とリズムであり、
航空機の客室乗務員の独特な声とイントネーションも、
飛行機という空間の中に適してマニュアル化されたひな形であると思います。
バスガイドは、
独特の節回しと鼻にかかったちょっと色っぽい声のひとが多いと聞きますが、ゆら~りゆられるバスという車内だからこそ耳に心地よく入ってくる声なのでしょう。
それを、
ニュースキャスター調でエレベーター内でアナウンスをしたり、
飛行機でアテンションプリーズ!とパキパキ発声したりすると…、
おそらく上司からNGを出されることでしょう。
お客様からしてみても、
なんか威圧的…声デカイ、ハッキリしすぎで怖い…と思われるんじゃないかと。
バスガイドもニュースキャスター式でバリバリっとやってしまうと、
居眠りしたら叱られるんじゃないかと思って私ならば寛げません。
なので、
「化粧声」が悪いということではなく、適材適所にならって、
担当する仕事では適材適所+適声ということが大切だと私は思います。
上京したての頃の私の声は、
キャスター自らの個性が重要視される東京では、
不自然な声である「化粧声」。
つまり、適声ではなかったわけです。
適声にするためには、
自分の本来の地声を戻し、
その地声をシチュエーションに合わせて強弱発声できるようにすること。
さらに、地声での強弱を身につけた上で、
様々な映像シーンを盛り上げられるような、
声のバリエーションを身につけていくことができれば、
初めてプロフェッショナルと認めてもらえます。
私はそのためのトレーニングを東京で開始しましたが、
とても厳しいコーチでしたので、毎度2時間のトレーニングは全身の毛穴がきゅきゅきゅ~っと縮まるような感覚を覚えました。
それでも、その厳しさは、
真剣に私と向き合っている証であり、
うるさいコーチだと嫌われたとしても、なんとか私の声癖を直して、
仕事の質を高めていってほしいという願いがあったからだと思います。
フリーアナウンサーは、
大方は専門のエージェントへ所属しますが、
給料制ではなく(一部給料制エージェントもあり)、
殆どが歩合制です。
仕事の依頼が無ければ収入はゼロです。
その仕事もエージェントの営業力でも大きく変わってきますが、
ニーズがあってもオーディションという名の審査(プレゼン式の面接が殆ど)があり、その審査には複数のエージェントから推薦されるアナウンサーが集まります。
最終審査に合格してようやく仕事を得られます。
「化粧声」と指摘されていた頃の私は、
海外取材番組の最終回放送を終えて、
企業用のビデオのキャスター(ビデオプロモーション)や、
イベントのMC、トークショウの司会をするなどして、
なんとか生計をたてていました。
「化粧声」当時の審査合格率は5割といったところ。
やはり、東京はツワモノが多いなぁ~、
と落選する度に自信を失いかけていました。
それでも、
厳しいコーチのトレーニングを重ね、
自宅でも自主トレを続けていき、約半年ほど経過した頃、
地上波TV局の人気番組中(ズームイン朝!)でのコーナー司会のレギュラーが決定。
小さなコーナーで週1回程度の担当したが、
とても嬉しくて、
合格の知らせを受けた時は自宅でおんおんと嬉し泣きしていました。
合格の理由をエージェントへ電話で訊ねたところ、
「朝の番組に適した清々しいキャラクターと、
声と話し方に癖がなくて爽やかだったから、らしいよ」と。
声と話し方に癖がない!
これを聞いた瞬間、
「そうですか、ありがとうございます^^がんばります!」
と爽やか~にリアクションしていた私ですが、
電話を切った後、
「ひゃぁっほうぅううぅ!!
癖がないって!癖がないってよ!
聞いた?癖がなくなったんだよぅ!
もう化粧声じゃないんだよぉ!、ほら聞いたでしょっ?」
と、誰もいない8畳の部屋の四方八方の壁に向かって話しかけていました。
誰かに見られていたら、相当イタイ状態であったかと…。
こうして、キー局レギュラーとしては、
ようやく2本目の番組を得た私でしたが、
その仕事は2年間担当させていただきました。
麹町にある当時のズームイン朝!のスタジオのあたりを通ると、
今でも懐かしく、当時の想い出が蘇ります。
毎回放送終了後にスタッフと朝ごはんを食べた(なんたって早朝の仕事)、
インド料理屋さんの「アジャンタ」は現在も繁盛店。
その「アジャンタ」で食べたサグマトンカレー(ホウレンソウと羊のカレー)がおいしくておいしくて…
それ以来、サグマトンカレーが大好物で、嬉し楽しの想い出のカレーとなりました。
ホウレンソウはルウに溶け込んでややほろ苦く、
マトンは羊肉好きの私にはたまらない羊らしい癖のある匂いを放ち、
朝っぱらから「カレーは飲み物である」のごとく、
5分ほどでペロリと1皿平らげておりました。
「化粧声の癖」を直し、
そして「癖のあるカレー」の味を覚えたのが、当時の私でございます。
あ。
「化粧声」の話から、
かぐわしいサグマトンカレーの思い出へワープしてしまい、
むりやりつなげようとがんばってみました。
大変失礼いたしました。
ちょうどこの番組に合格する少し前には、
トレーニングのコーチからも、
「化粧声がなくなったね、よくがんばりました^^」と褒めていただきました。
そして、
「あなたの個性をどんどん生かしてくださいね。
あなたの物の捉え方や表現が面白くて、私は大好きですよ!」
と激励してくれました。
トレーニングの帰りにコーチがおごってくださった、
ラーメンの味が忘れられません。
そのラーメン店は、
今でも神楽坂にあるカウンターだけの古いお店で、
コーチと一緒に食べたみそチャーシュウラーメンがおいしくておいしくて…
………。
おなかが空いてきて、
また脱線ワープしてしまいかねません。
今日はここまでにしておきます。
次回は、
「化粧声」のひとも、
「化粧声」じゃないひとも、
地声を育てる発声トレーニングのキホンをお伝えします。
ではまた^^