初めての講演。味方にしたのは…
「人前で話すことが苦手」だった私が、
1時間講演を続けざまに2件依頼されました。
1回目の依頼主は、
札幌のライオンズクラブ。
定例会での講演とあり、
出席人数は80名超えであったかと記憶しています。
テーマは「ミスさっぽろの仕事」or「ミスさっぽろの活動」
はっきりとは覚えていませんが、そのようなニュアンスでした。
5分までのスピーチはなんとかこなせるようになったものの、
パワポなんてない時代、
経営者の集まりを前にひとりで1時間。
「できない!むりぃ~(泣)」と喚こうが、
逃げられない任務ゆえ、
まずは1時間講演に対応できるボリュームの原稿作りをせっせと行いました。
スピーチ、講演も全体構成はほぼ同じで、
テーマ⇒エピソード⇒テーマで〆る。
要であるエピソードは、
ミスさっぽろの各地活動での出来事と、
各地の様子を伝えることで、
1時間話すボリュームの原稿を作ることはできました。
そして、その原稿をもとに、
1時間を想定して自主トレーニング開始。
ラジオカセットレコーダーに自分の声を録音して聞き返し、
つまらなかったらまた原稿を作り直して声に出して録音、
聞き返す…の繰り返し。
機材を通して自分の声を聴くことには最初は抵抗ありましたが、
嫌でも手段として選びました。
そうでもしないと、
1時間も話す自分の話の内容が、
聴き手にとって少しでも役に立つものなのか、
退屈で居眠りさせて終わってしまうのか、
一方的に自分が原稿を読んでるだけではわからないからです。
案の定、録音された自分の声と話の内容は、
何度繰り返しても、
「なんか不自然」
「こりゃ原稿読んでるだけだな」
「優等生っぽくてつまんないな」
こんな印象が消えませんでした。
つまり、自分で自分をジャッジする作業。
最初は自分の声を聞く行為への抵抗感がストレスになってはいたものの、繰り返していると、徐々に聴き手側の感覚で自分をジャッジできるようになってきました。
こうなると、しめたもの。
自分を客観的に感じられるもうひとりの自分を起動させることができるのです。
すると、そのもうひとりの自分が、
実際のステージに立つ自分を、
客観的な視点から話し方や内容を調整していこうとする味方になってくれるのです。
思えば、この「もうひとりの自分」感覚と作業は、
後にアナウンサー、ニュースキャスターとなる私の仕事に不可欠なスキルとなっていくのです。
大物キャスターといわれる大先輩の方も、
「本番ではもうひとりの自分の存在を
常にこの辺(右前頭部を指して)に置いている。
そいつは新人時代から今も一緒にいる」
と仰っていました。
その話を聞いた時に、
私は激しくブンブン頭を振って頷きました。
おそらく、「人前で話す」ことのプロフェッショナル、
キャスターやアナウンサーではなくとも、
「人前で話す」ことが重要になる職業の人は、
この感覚をもたれているひとが少なくないと思います。
また、その大先輩も、
実は人前で話すことが苦手だったのに、
アナウンサーとなった方でした。
意外に思われるかもしれませんが、
「人前で話す」ことは苦痛だったという方はけっこういらっしゃいます。
コンプレックス克服のための努力をしていたけれど、
その延長線上で「人前で話す」職業になったというケースです。
前回に、「…1時間も話すためにはマインドの持ち方が要…」と書きましたが、
それは、
客観的に自分の話し方や話す内容をジャッジできるマインド、
「客観的マインドが要」であるという意味です。
マインドというと、「思い」を持てばいいんだ!
と受け止められがちですが、
そうではなく、
「そうだよね~、マインドね、それって必要だよね~」
と思うだけでは何も変わりません。
「思い」を感じたら、
客観的マインドを定着できるように、
なんらかの作業を自分に課して、
その繰り返しによって、
もうひとりの自分感覚を持つことができます。
そのなんらかの作業の最も効果的なものは、
自分の声や話し方、姿を、
自分で見る・聞く・ジャッジする。という作業です。
今はスマホひとつあれば、
自分を録画することも簡単です。
最初から姿を見ることに抵抗があれば、
声とスピーチの録音から始めていき、
慣れてきたら自分が話している様子を録画すること。
現在、研修講師としての私がプログラムを制作する場合は、
自己紹介やプレゼンを録画して、
視聴しながら全員でフィードバックするカリキュラムを導入することがあります。
最初は全員「え~~~!!!(泣)」
とネガティヴ反応があって嫌がられますが、
研修という逃げられない環境に置かれてしぶしぶながらも受講者様は取りかかります。
すると、研修後では殆どの受講者様がみちがえるように変わります。
集中力もものすごく高くなります。
それは、自分の姿を自分で見るので、
客観的マインドをもったもうひとりの自分を相棒にできているからなのです。
少々荒療治ではありますが、
自分を自分で見るという手段は、
限られた時間で効果を最も高めることができる方法です。
ということで、
話は戻りますが、
客観的マインドでもうひとりの自分を相棒にすることができた当時の私は、いざライオンズクラブ、ロータリークラブでの初講演へ臨みました。
結果は、反響は…。
次回へ続きます。